伊藤洋一郎の理《RI》絵画⇔写真 vol.005

中村淳子氏に、今年一月に椿近代画廊で行われた伊藤洋一郎氏へのオマージュをお願いした

     ― KITCHEN CHIMERA 012 1997.10.1 大岩紀子 ―

 

 ゆくえ

   伊藤洋一郎へのオマージュ

                                        中村淳子

それは

あらかじめ刻まれた

喫水線だった

 

それ以上

欲を積めば沈み

それ以上

荷を下ろせば

転覆する

 

天と地の交わる

ひとすじの航路を探しあぐね

おそらく世界は

幾千もの箱船を

のみこんできた

 

眼を半眼に閉じれば

そこにはもう

陸も海もない

あるのはただ

ひろやかな海の涯てに

けぶるように横たえた

世界の肢体だけだ  

 

ふと

観察者をきどり

肢体の喫水線に

水準器をおいてみる

 

すると

いったい世界は

どう傾いだものか

ただ一粒の

〈泡〉のゆくえさえ

とうに

知れないのだ

 

1997.1.21-31 伊藤洋一郎展 椿近代画廊