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阿波番茶

波で伝承される醗酵茶のはなしです。

ヒマラヤから東南アジア北部、中国大陸南部、西日本にかけて広がる「照葉樹林文化圏」は常緑広葉樹林帯に住む民族が、神話や伝説をはじめ、培われた習俗にも共通点が多く見られることでこのように呼ばれています。味噌•納豆などの醗酵食品や麹を醗酵させた酒づくり、コンニャクの製法、芋類•粟•蕎麦などを栽培する焼畑農耕、ドングリ•葛などを水に晒してアク抜きする技術、蚕から絹を作る技術、樹液から漆を作る技術など思いつくだけでも多くの共通する事例があります。

 

照葉樹林文化圏に位置する四国は至る所に共通の特色で基層を形づくり、現在でも変わったお茶の製法が残っています。後醗酵茶の高知の碁石茶と愛媛の石鎚黒茶、徳島の阿波番茶です。後醗酵茶とは茶葉のもつ酵素の働きによらず、細菌(バクテリア)によって醗酵させた茶のことをいいます。紅茶や烏龍茶は醗酵茶という名称で区分されていますが、微性物は関与せず茶葉のもつ酵素で酸化醗酵(成熟)したものです。後醗酵茶は乳酸菌や麹菌などの微性物によって醗酵させたお茶のことをいい、製造工程の違いによって3種類に分類されます。

 

好気性の細菌で醗酵させた好気的醗酵茶のプーアル茶(雲南省)やバタバタ茶(富山)、空気を遮断した条件下で嫌気性の細菌によって醗酵させた嫌気的醗酵茶の阿波番茶やラペ•ソー(ミャンマー)、ミヤン(タイ)、竹筒酸茶(雲南省)、好気性醗酵の後に嫌気性醗酵を行って製造された2段階醗酵茶の碁石茶や石鎚黒茶など、独自の製法と伝統を持っています。

 

徳島県の阿波番茶は相生町や上勝町で作られています。真夏の暑い盛りに茶葉を一枚残らず刈取り、釜で煮てから揉み、桶に浸け込みます。桶の上まで押し込んだ茶葉に布で覆いをして、木の蓋を載せ重石をした後に、茶葉を煮たときの茹で汁をかけて嫌気性の細菌によって醗酵させます。2週間ほど醗酵させ、桶から取り出し天日で乾燥します。味は酸味があり、好気性•嫌気性両タイプの乳酸菌が多数存在し、シュウ酸、酢酸、コハク酸、酒石酸も含まれます。最近では健康機能食品が注目され、病気予防や老化防止の助けとなる成分が含まれたお茶として飲まれています。

 

藍のことに興味のある方、知識のある方は、阿波藍の製造工程との類似を思い浮かべたのでは?

 

中国雲南省は蓼藍の原産地の推定地域です。