伊藤洋一郎の理《RI》絵画⇔写真 001

彼の作品には、或る年令に達した者にしか表現し得ない「何か」が存在し、見る者を圧倒する。油彩を下地にその上にクレパス、オイルパステルを塗り重ね、それを削り又塗り重ねていく。その行為を繰り返す中に伊藤洋一郎の「物語」が誕生する。掲載写真ではお伝えしきれないのが残念であるが、静けさと熱を帯びた作品である。

 ― KITCHEN CHIMERA 012 1997.10.1 大岩紀子 ―

 

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1981年から2003年まで東京都大田区久が原に存在したギャラリー「ガレリアキマイラ」のオーナー・大岩紀子の追悼記念として、その活動を記録した本『ガレリアキマイラキマイラ』 2014 発行 宝船計画  に掲載 p190 文:森くみ子

 

伊藤洋一郎が大岩紀子さんと出会ったのは、ひょんなことからデッサンを観ていただいたことからでした。わたしが26年前に徳島に移り住み、絵描きである伊藤に出会い、58歳の彼がもう一度人生のチャレンジをはじめたのです。青春時代、戦争に巻き込まれ、純粋に自己完結な方法で生きていました。虚空の彼方から見やる精神とその孤独感のなかで「情」を恋うる感性を合わせ持っていた彼の描いた絵を最大限の感覚で観てくれ、表現して応援してくれた大岩さんでした。 

1997年、椿近代画廊の展覧会に導いてくれたこと、その時の作品によせて、透徹した評を残してくださったことで伊藤はどんなに心強く思ったか知れません。