藍でつくられる色 - ② 御納戸色

2 015年の展覧会で「藍によって作られる色」を主題に作品の展示を行いました。藍以外の染料のことは専門ではありませんし、それほど経験を積んだ訳でもありませんが、江戸時代の文献をみていて試してみたくなったのです。紺屋の仕事の形態で、糸染め(先染め)専門と後染め専門の呼名が各地に残りますが、藍以外の染めも併用していたのは主に後染め紺屋でした。

 

江戸全期を通して茶系統の色が最も多く流行色になりましたが、中期以降藍系統も江戸前のクールな色として愛用されるようになりました。阿波藍の生産もこの頃から飛躍的に多くなります。

 

「御納戸色」は灰味の暗い青色で、藍玉の単一染と書かれています。納戸系統の染色は茶、鼠系統と共に好まれ江戸中期ごろの代表的染色になります。江戸後期になると微妙に違う色の染め分けも流行色となり、下染めの藍の濃度、併用して染める矢車、茅、刈安などと媒染剤の鉄、酸で調整し染色していました。下染めの藍が濃花色で「錆鉄御納戸」空色で「鉄御納戸」濃浅葱で「御召御納戸」を染め分け、「錆御納戸」「御納戸茶」「高麗納戸」など同じようで少しずつ違う色も名付けされています。染め布の素材の違いによっても色の雰囲気は変わりますので、呉服屋と紺屋との心をくだく連携も想像できます。

 

納戸色•御納戸色の呼称の由来ははっきりしませんが、納戸(屋内の物置部屋)の垂れ幕に用いられた布の色からとか、藍海松茶の絹を納戸へおさめ、年が経って見ると色が損じて面白き色だといって名付けたともいわれています。

 

「粋」という好みを希求した江戸人の要望に、紺屋の技量が応えて優れた染色文化を作り出しました。この時代の町人の着物は殆ど残っていなくて残念です。